
『グールの棺』/クトゥルフ神話TRPG
1. 概要
難易度:☆☆(謎解きなしクローズド,戦闘で死亡する可能性あり)
プレイ時間:1〜2時間
プレイ人数:1〜2人
推奨技能:特になし
時代:いつでも.元ネタは1850年代.
場所:土葬の習慣がある地域.
『早すぎた埋葬』と『死体安置所にて』が元ネタ.
2. 目覚め
探索者は暗闇の中で目覚める.身動きしようとすると,何か壁や天井のようなものにぶつかってしまう.手足でさぐってみると,自分が体より一回り大きいほどの箱のようなものの中に閉じ込められていることに気がつく.1/1d3のSANチェック.
持ち物は,ポケットに入っていた物が一部残っているだけである.貴重品や武器は抜き取られている.
叩いたり蹴ったりして出ようとすると蓋にわずかに歪みが生じ,ほんのわずかだが光が差し込む.箱の内壁の一部が照らされて,そこに描かれた絵が見つかる.それは犬面の怪物に人が食べられている絵だ.0/1のSANチェック.
大きな音を立てた場合,何かがやってくる.<聞き耳>に成功でペタペタという足音が近づいてくるのが分かる.やがて,ガチャリという音がした後,キィと軋む音,続いてバタンと何かが閉まる音がする.そして,獣の強烈な不快な匂いがし,ハッハッと荒い何かの生き物の息づかいが聞こえる.
その匂いと息遣いがぐっと近くなり,探索者はこの箱の外に何か人ならざるものがいる,と感じる.そしてまた,ガチャリ,キィ,バタン,という音がした後,何かの気配は遠くなる.
<知識>あるいは<オカルト>に成功で,安全棺という生きたまま埋葬された時のための特殊な棺のことを思い出す.記憶に従って,棺の中を探ると内側から棺を開けるための掛け金がついており,それを開けて脱出することができる.
STR対抗で棺から出ることもできる.だが,その場合は物音を聞きつけたバーチが斧を持ってやってくるかもしれない.
3. 死体安置所
天然の洞窟を加工したような部屋で,重い鉄の扉がついており,扉の上部に空いた採光用の窓が唯一の光源である.扉には一見鍵が無いように見えるが開かない.
黒い棺が探索者の数より二つ多い分,床に置かれている.それらは探索者が入っていたものであり,一つを調べると怯えた少年が入っており,もう一つは空である.空の棺を調べると血痕が見つかる.また,壁に掘られた横穴にもいくつか棺が入っている.
棺桶を積み重ね,明かり採りの窓から何とか這い出ることができる.扉を見ると,外から鎖と南京錠で施錠されているのが分かる.
また,STR対抗により扉に体当りして南京錠を壊すこともできるが,その場合は音を聞きつけた斧を持ったバーチと戦闘になるかもしれない.
少年の名前はジョシュアで,年齢は9歳.非常に怯えており,「お母さんとお父さんのところに戻りたい」と繰り返すのみである.落ち着かせて話を聞いてみると,「犬みたいな怪物にさらわれた」「変な味のするお肉を食べさせられた」と答える.
4. 洞窟
死体安置所から出ると,細い通路が左右に伸びている.
左に行くと高さ10mはあろうかという竪穴に出る.陽が差し込み,崖を伝って僅かながら水が流れている.そして,地面には何かの骨がごろごろと晒されている.<医学>に成功でそれが人間の大腿骨であると分かる.あるいは,<目星>で人間の頭蓋骨の一部を発見してしまう.いずれもSANチェック.
ここから脱出するには,<登攀>に3回成功しなければならない.1回目の<登攀>に失敗した場合はダメージ無し.2回目の<登攀>に失敗した場合は1d6,3回目の<登攀>に失敗した場合は2d6の耐久力が減少する.落下して<跳躍>に成功した場合,失う耐久力は1d6少なくてすむ.また,ジョシュアは<登攀>を試みることが出来ない.
もし,誰か一人でも落下した場合は,バーチが悲鳴や物音を聞きつけてやってくるかもしれない.
右に進んだ場合は蝋燭で照らされた部屋に出る.木製の粗末な机がいくつか置いてあり,血で汚れている.また,血で汚れた斧が転がっている.<医学>に成功で,これほど派手に血で汚れているのは,生きている動物を切り刻んだからだと推察できる. 部屋からは,さらに二つの通路が伸びている.通路を調べようとすると,片方の通路からバーチが襲い掛かってくる.犬のような鼻面に,ゴムのように弾力がある肌は,墓場の匂いのするカビに覆われており,鋭い鉤爪とひづめ状に割れた足を備えている.
バーチが出てきた通路を探ると小さな部屋に行き着く.蝋燭が一本着いており,床にはボロボロになった人間
の服が積み重ねられており,寝床に使っていたのであろうことが推測される.服の山を調べると,『バーチの手記』が見つかる.また,部屋の隅の樽を探ると,金貨一袋と探索者の持ち物が入っている.
もう一方の通路を調べると,出口に繋がっている.扉を開けると,山の斜面に開いた穴から脱出することができる.シナリオクリア.
5. バーチとの戦闘
食屍鬼のバーチ
STR 16 CON 13 SIZ 13 INT 8 POW 13 DEX 13 移動 9 耐久力 13
ダメージボーナス +1d4
かぎ爪 30% ダメージ 1d6+db
噛みつき 30% ダメージ 1d6+牙でいたぶる(1d4)
斧(持っている場合)
バーチを見て失う正気度は0/1d6.
斧は基本命中率20%でダメージは1d8+2+dbであり,バーチもこれに倣う.
ジョシュアは攻撃の対象とならない.その他行動方針や技能値は基本ルルブpp.180-181に準拠.
バーチは負けそうになると,降参し命乞いをしてくる.金貨があるのでそれを渡す,他にも隠された財宝があるのでそれも分けるなど言って探索者の気を引こうとする.あるいは,自分がこんな姿になってしまったのは,怪物のせいだと言って同情を誘おうとする.また,ジョシュアはここに置いていけとも言うかもしれない.そんなことを言いつつも,状況次第ではバーチは不意打ちで探索者に牙を向けるだろう.
6. バーチの手記
この体になってから何年経っちまったか
葬儀屋なんてやってなければ
あいつらと出会うこともなかった
良い思いが出来たのは,ほんの最初だけだ
こんな顔になっちまったら金だって使えねえ
腐肉漁りのくそったれが!
死体が足りねえ
もっと遠くまで探しに行くしか
この辺りの墓場はあらかた漁った
同じところばっかでやると
村の人間に怪しまれる
俺は悪くねえ
葬儀屋なんて忌々しい仕事を押しつけた
あいつらが悪いんだ
そうじゃなきゃ食屍鬼どもと取引なんかしなかった
死体がなければ作ればいい
人間をさらってくればいいのさ
そうだ 仲間も作ろう
息子がいたら どんなにいいことか
ずっとそう思ってた
7. クリア
真相
葬儀屋のバーチは密かに死体を食屍鬼に提供することで見返りを受けていた.しかし,彼自身が食屍鬼化してしまったので人間社会にいられなくなり,放棄された古い墓地に住みつき,時おりよそから死体を盗んできては食いつないでいた.それも段々難しくなり,生きた人間をさらってきて殺すことで死体を得るようになった.ジョシュアは食屍鬼になるために,バーチによって人間の肉を与えられた.ジョシュアが食屍鬼になってしまうかは,またシナリオ後の話である.ジョシュアを助けた場合,両親が御礼に晩餐会に招待してくれるかもしれない.そこで,食事があまり進まないジョシュアがこう呟くのを耳にしてしまうかもしれない.「あのお肉が食べたいなあ」
報酬
SAN回復 生還した +1d3
ジョシュアを助けた +1d3
探索者全員が生還した +1d3
アイテム 金貨分の現金
8. プレイレポート
オフライン,PL2名で1時間半.ジョシュアは発見できず,バーチを殺して脱出.クリア.
(感想)
PL1:クローズドだが,館ではなく洞窟という舞台がいつもと違って良かった.
PL2:バーチを捕らえた時,もしかしたら他に仲間がいるかもしれないと警戒していた.もし,バーチが他に仲間がいるようなことを示唆していたら,探索を切り上げて脱出していた.